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2010年 10月 03日
今年もジャパンオープンとカーニバルオンアイスを会場で見てきました。JOは集客状況が昨年より格段に良く、好演技が多く(特に男子は、現行イベントになってからの5回のうちで最も良いパフォーマンスが揃ったと思う)、豪華で満足感の高い試合でした。
<男子> バトル…グレン・グールドメドレー。今年は各種ショーでショートバージョンをすでに何度も滑っていて、本人も見る側も体になじんだプログラムだったと思います。昨年披露のプログラム「エクローグ」のような総毛立つほどの感動には至らなかったけれど、墨絵のような水の流れのような、彼らしい知的でハイブラウで、でも冷たさのない美しい演技でした。後半に少し疲れが出てしまったのは残念だったけれど、よく頑張りました。 ブレジナ…パリのアメリカ人(昨年のFS持ち越し)。衣装は同じでプログラムもごくわずかな改変を加えて臨みましたが、当ブログでも既述のとおりシーズン前のけがで滑り込みが不十分なこともあり、本人としては少し残念な結果だったと思います。当方の印象は決して悪くなく、目標としていた4Sを多少の減点がありながらも成功させたのは大収穫。ただ、今大会は他選手のいい演技と密度の高いプログラムが多く、ブレジナの演技が完璧ではなかったこともありプログラムが淡彩で単調な印象が否めず、体調や気持ちが少し落ち着いたら衣装の変更やプログラムの大改革(できれば新プログラムへのスイッチ)も検討してもいいかなと思いました。ネーベルホルンからの連戦参加・来日に心から感謝します。 小塚君…リストのピアノ協奏曲第1番。8月のフレンズ・オン・アイスのときに比べても別のプログラムかと思うほど素晴しく成長していました。冒頭の4Tはほとんど回りきっての惜しい転倒、続く3Aはすっぽ抜けと厳しいスタートでしたが演技が進行するほど落ち着き、良くなってきて、これまでは課題だった後半のジャンプをほぼノーミスで乗り越えたことで高い技術点を獲得できました。同じく彼の長年の課題だと思っていた上半身のコントロール&使い方が、劇的に良くなっていたことにも目を見張りました。定評のあるスケーティングはもちろん素晴しいので、全体にとてもスピード感のある、力強い大きな演技で好印象を持ちました。彼は例年、シーズン最後の試合まで来るとぐっとプログラムの完成度が上がってきますが、今季は起点のレベルが既にかなり高いので非常に楽しみです。 リッポン…今年のジャパンオープン全出場者中MVPと言っていい素晴しい演技を見せてくれました!3年前からアダムアダムと事あるごとに騒いでいた私も、この演技を会場で見ることができて感無量でした。 彼がリンクに入ったときにまず「大きくなった」と思い、背が伸びただけでなく背中の辺りがガッシリとして大人の運動選手の体になったと感じ、演技の質もスケールの大きい力強いものに急速に進化していて驚きました。以前からミスの少ない選手でしたが、この日は冒頭のわずかな乱れを除けばほんとうにパーフェクトな出来で、プログラムの密度も高く凄まじい迫力がありました。今季のルール変化(要素の減少やコリオグラフステップ、女子のコリオグラフスパイラルなど)は時間の余裕を産んで、上手に利用できている選手は旧採点時代の良い部分であるスケートや選手の個性そのものの楽しさ美しさを存分に見せる方向にシフトしていると感じますが、もともと旧採点時代の匂いがあり、新採点にも非常に良く対応できているリッポンには理想的な状況かと思っていて、しかも予想以上の完成度に達していることがわかったので、ほんとうに感慨もひとしおでした。 彼の大きな課題は「技術力が高く、失敗も少ない。けれども彼のトレードマーク、『アダムといったらこれ』という決定的な個性がまだ確立されていない」という点だと以前から思っていました。ほんとうにスケートが好きで好きなスケーターもたくさんいるんだろうなと思うけれど、今回は○○さんみたいなスケート(○○にはいる名前もその時々によって違う)と思うこともしばしばあるので、今後はこれがアダムの個性、というものを自信を持って押し出していけるようになれば鬼に金棒だと感じます。今シーズンの大躍進を楽しみにしています。 プルシェンコ…直前のリッポンのあまりに素晴しい演技にたきつけられて、本気を出してくれると嬉しいと思っていました。滑走直前の表情が大型スクリーンに映り、火の出るような眼光にゾクゾクしました。 競技モードの体にちゃんと整えてきていて、演技内容は悪くなく、着氷危ない!と思った最初の3Aも見事にクリアし、4Tは入れなかったもののジャンプを次から次へと決めていました。ただ、リッポンの凄まじい迫力のあとではプログラムの密度が薄い印象が否めず、ヤマ場らしいヤマ場が来ないうちにあっという間に終わってしまった感もあり、得点評価もそれを反映したものになりました。 競技が好きでスケートが好き、という感じは存分に伝わったし、いつものように周囲やファンへの目配り気配りに溢れていた点はとても好印象で、体調に気をつけながらスケートを楽しみブラッシュアップを続け、2014年にはぜひ選手として地元の五輪に参加できるよう準備を重ねてほしいと感じました。 高橋君…タンゴメドレー。2008-09シーズンのジェレミー・アボット使用曲の別バージョンでした。いままで行なっていたようであまり行なっていなかったテイストに溢れていて、振付師と臨む新しいアプローチの面白さ・難しさの両方を感じさせた初演でした。 技術面では冒頭の4Tをほんとうに見事に決めたのがまず特筆すべき嬉しかったことで、後半のジャンプの連続も大きな失敗なく見事に決めたのは素晴しかったです。まださほど滑り込んでいないプログラム、動きなれない動作の連続、(初見では)ザクザクしていると感じた曲編集など滑る本人も見る側も慣れない部分が多く、まだ見ていて脳内麻薬が出ると思える段階には至っていないけれど、シーズンが進むにつれてどんな風に深化するのかお手並み拝見、と思いました。 日本スケート連盟:ジャパンオープン2010競技結果 スポーツナビ:浅田・高橋両選手の競技後コメント <女子編、インターバル編に続く>
by morningdew21
| 2010-10-03 21:50
| 競技・大会
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