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2006年 12月 06日
思えば、この大会は高橋君のためにあったのかもしれない、と会場でエキシビションまで見終わってしみじみと思った私でした。
長野駅前にはたくさんの鳩が生息しているのですが、昨日駅に到着した時、私の目の前を多くの鳩が群れを成して果てしなく旋回していて、「これは吉兆と思っていいんだろうな」と気持ちが明るくなり、高揚してきました。私はいわゆる縁起をかつぐタイプではありませんが、いい兆し、と思ったことはいい方に解釈するようにしています。 <男子フリー> 会場には男子フリー後半戦(上位6人)の前に到着。6分間練習ではどの人も体がよく動いていたし、いい大会になる予感がありました。 高橋君に限って記すことになりますが、彼は今大会最初から好調だったようで、余計な力みもなく滑りもジャンプも柔らかく、と同時に心に秘めたものもしっかりと体の外に現れていて、緊張するはずのシチュエーションでもいつもの「変なビビリ」を微塵も感じさせず、なんともいえずいい感じを大会期間中漂わせていました。 今大会もショートが2番めの登場、フリーは最終滑走ということで、まぁ一般的に考えればプレッシャーも大きくなるところでしょうが、「これってオリンピックの時に状況が似ているけれど、期せずして彼のための大会みたいなお膳立てになったオリンピックの時と同様、今度も高橋君のための大会のお膳立てのような感じだし、そうなるといい」と思っていました。 結果は皆さんもご存知のとおりのもので、ちょっと言葉ではうまく形容できないんですが、何かが高橋君についていた(「運がついていた」かも「スケートの神様か、あるいは別のものかわからないけれど、何かがついていた」かもしれない)ような、人智を超えたものを感じました。 最初の4回転に入るところがあまりにさりげなく、ジャンプもあまりにやすやすとクリアしてしまったため4回転かどうかわからなかったくらいだったのですが、ジャンプをクリーンに降りた時点で私は「やったー」と絶叫し、中盤の5連続ジャンプも決めるたびに同様に叫び、ひとつひとつ要素をこなすたびに叫び続け、最後のストレートラインステップではもちろん場内と一緒になってありったけの力で手拍子を送り続け、ラストのスピンが終わるまで拍手の手を止められませんでした…。演技終了後、場内に甲高い叫び声が響いたのを放送で確認できた方もおられると思いますが、あれは私です(ホント)。 場内の大半の人々が、ものすごく自然に立ち上がり、高橋君の演技と健闘を讃えました。スタンディングオベーションの文化のない日本ではこれは異例のことで、まさにそうせざるを得なかったとしか言いようのない、それはそれは凄まじい瞬間でした。この瞬間にこの場所に居られたことを心から感謝し、生きていることに感謝した瞬間でした。この演技を正当に評価してもらえたことに深く感謝しています。 織田君・小塚君も素晴らしい演技だったのは事実で、私のところで詳しく言及できないのは心苦しいですが、彼らそれぞれの素晴らしい演技が大会を素晴らしいものにしてくれたことにも感謝したいと思います。 こちらもぜひお読みください。 フィギュアスケートニュース: 高橋大輔が優勝!男子も日本勢が表彰台独占 NHK杯 <女子フリー> 浅田さんが、完璧とはいえない演技でしたがそれでも苦しい苦しいプレッシャーに敢然と立ち向かい、壁を壊し乗り越え、新しい場所へと進む姿を見届けることができたことが何より嬉しかったです。彼女の心意気に応えるべく、精いっぱいの拍手とスタンディングオベーションで讃えました。 私は会場入りする前から、浅田さんがフリーの衣装を赤にするということは知っていたのですが、6分間練習で登場した姿を見て、衣装の似合い方といい会場での映え方といい、「これは決まりだな」と心底思いました。日本女子がよく着ている(着ていた…最近は変化の兆しがあるので)淡いパステルカラーの衣装は、出てきた時点で後退して見えるんですよ。ましてや会場では、スパンコール類のきらめきが尋常ではないので(テレビや写真ではその点が伝わりにくい)、強い色でできるだけ光るものがたくさんついた衣装はそれだけでアドバンテージがあると、どの種目を見ても思いました。 村主さんは、私は前シーズンまでは苦手なタイプのスケーターでした。可もなく不可もなく、けれど大ミスはしないのでなんとなく勝ち残っていって入賞者常連になる(特に国内ではそのことが圧倒的なアドバンテージになる)というのがどうも居心地悪かったし、日本人から見てもひ弱で華奢に見えるパフォーマンスは見ていて悲しくなることもしばしばでした。 今シーズンのフリープログラムは、一転して私は非常に気にいっており、生きる喜びがあふれていてその楽しさを分けてもらえるようで、見ていて幸せな気分になります。 今大会でのフリー演技は、「最後の一枠」をこれまで何度も射止めてきた村主さんらしい気迫にあふれたもので、最後のストレートラインステップでは明らかにスピードが落ちてきたものの「人生を駆け抜ける」心意気がひしひしと感じられたので、私も思いっきり手拍子で支えたいと努めました。 今後の競技生活続行にも強い意欲を見せている彼女、大会ごと、年ごとに課題とモチベーションを持ちながら、楽しんでスケートを続け、私たちに楽しさを分けてください。 中野さんは、大会3位、ファイナル落選という結果に気落ちした様子もあり、笑顔が泣き顔になってしまうような場面がたびたび見えましたが、中国杯よりずっとスケールが大きくなり技の精度も上がり、何よりも、誰より上品で美しくてシャープで凛とした滑り姿と心意気には大きく感銘を受けました。 とても価値のある3位でした。全日本での更なるスケールアップと、健闘を心から楽しみにしています。 海外選手で印象に残ったのは、金彩華(日本生まれ育ちで4人目の日本選手として注目していた存在。ショート・フリーともに1番滑走ながら随所にいいところを見せてくれました。キム・ヨナに次ぐ韓国2番手として世界選手権・五輪目指して更に精進を!)、方丹(ショート・フリーともに浅田真央の直後滑走でさぞやりにくかったことと思いますが、親しみやすい優しい笑顔とともに素敵な演技を見せてくれた彼女は中国杯以上に深く記憶に残りました)、ショートでのベアトリーサ・リャン(転倒がなければショート3位か、と思わせた勢いのあるシャープな演技でした)といった人たちでした。 観戦記は表彰式へと続きます。
by morningdew21
| 2006-12-06 13:18
| 競技・大会
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