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2009年 06月 21日
<第二部で印象に残ったスケーター>
・リード姉弟…楽しいプログラムでした。昨年・一昨年のメダリスト・オン・アイスで滑ったナンバーは、競技プログラムをアレンジしたもの(要素の一部を省き、違う曲と合わせた)だったので、もしかしたら今回のが初の本格的エキシビナンバーだったかもしれません。 面白さを言葉では表現しにくいので放送で見ていただければと思いますが、今回のはコミックバレエのような感じになったけれど、バレエの衣装で登場したクリスのたたずまいが素敵だったので、いつか正統派のバレエプログラムを見せてもらえたら楽しいな、とも思いました。 ・村主さん…会場で見るといつも実感しますが彼女はほんとうに滑りの質が良く、スピードもスケールもパワーもあってとても大きく見えます。エキシビナンバーながら苦手の3Sも入れてきて、チャレンジャーでアグレッシブな姿勢には感嘆します。 ・ベルネル…ショーへの出演というのをほとんど行なわない人なので、久しぶりの来日実現となりました(一昨年のNHK杯以来)。日本のファンに向けてのびのびとした、大きな、ほんとうに綺麗なスケートを存分に見せてくれました。 今回のショーを全編見てつくづく思ったのは、たくさんの人の中には「スポットライトが似合う人」というのが厳然として存在する、ということ。ベルネルもそうだと痛感しました。本物のスターとしての演技に感謝します。年末(GPファイナル)の再来日を期待しています。 ・サフチェンコ&ゾルコビー…なんと、来季のSPをもう仕上げて披露してくれました!ジャンプやツイストリフトが2回転だということを除けばほとんど完成されており、ペア競技の場合大きく実力差が出やすいステップシークエンスも素晴らしいもので、うっとりと見つめていました。 現在いちばん強いといわれるカップルがこれほどスタートが早いわけで、五輪に向けてのレースが熾烈だということをあらためて実感しました。 ・ランビエール…シャンソンの名曲にのせての新プログラム。選手時代の振付師、ザロメ・ブルンナー女史の作とのことですが、私が知る限りランビエールのプログラムの中ではもっともシンプル、でもそれゆえに彼のスケーターとしての素材の良さを強く浮き彫りにするものでした。 彼に寄り添い、共演しているように見えた照明も印象的なもので、見る人の心に深く訴えてくるプログラムだと思います。 DOIでの外国人ゲストスケーターの演技を毎年見るたびに思うのは、競技での得点とは異なるスケートの価値というものがたくさんあり、その点においてまだ日本選手は海外スケーターに学ぶものが多々ある、ということ。今年も彼らの演技を見つめながらそのことを痛感しています。 ・織田君…びっくりするほど凝りに凝りまくった、細部までつくりこまれたエキシビションナンバーで、つくる作業はコーチと差し向かいで楽しみながらできたのかな、と想像しながら微笑ましく見ていました。織田君のことは本質的にシャイな人だと当方は思っていて、今回もそのあたりを再認識する場面もあったけれど、高い技術力と優れた吸収力の持ち主でもありますし、競技プログラムも含めて「滑っていて楽しい」というプログラムを演じながら、また新しい自分を発見し表現し、のびのびと思い切り大きく演じて滑るようになったらとても面白いことになりそうです。五輪シーズンの彼の更なる成長がほんとうに楽しみです。 ・安藤さん…最終日は私の見た昼公演、そして千秋楽と、ともにモーツァルトのレクイエムで滑りました。事前の紹介アナウンスでもいっさい言及はなく、登場しスポットが当たった時点で前日までと衣装が違う、演技が始まったら曲目も違う、ということで驚きながら見ていました。今年はエキシビションを複数用意していたという話はあり、昨年のCOIでも公演ごとにプログラムを変えて複数回見る観客への配慮も行なった彼女ですので、今回のはそういったことかもしれないし表現者としての衝動かもしれないし、いずれにしても複数公演見た人にとっては驚きもひとしおだったと思います。衣装は深い紫色の長袖・スカート丈の長いワンピースで、いつものように彼女にとてもよく似合う、美しいものでした。 安藤さんは最近、極めて短期間のうちに演技と滑りの質が劇的に変わって飛躍的に向上しており、21日のプログラムでも瞠目しながら見ていました。スピード・演技の流れ・パワー・音とプログラムの本質をとらえる解釈と表現はものすごいものがあり、見るものを突き動かす力に溢れていると感じました。良い演技の多かったこの日でしたが、私が唯一スタンディングで讃えたのが安藤さんのこの演技でした。 「ベンツの滑り」と佐藤久美子先生に言わしめた荒川さんのそれに近いものも感じました。金沢での公演をご覧になれる方は、ぜひこのふたりの競演を存分に味わい、楽しんでほしいと思います。 安藤さんに話を戻すと、19日・20日に披露したタップダンスをイメージしたプログラムでも極めて高い技術力をアピールしたようで、こちらは番組に収録されたので放送で存分に楽しもうと思います。 本公演で安藤さんが披露したふたつのプログラムは演技の質感・テイストも全く対照的で、聖と俗の両極端のように感じた人もいるのかもしれませんが、21日はオープニングだけで着用していた話題の衣装は、安藤さんらしいきりりと潔癖で凛としたイメージのあるもので、男の子のようなカッコ良さもあり、かぶいた/下世話なイメージとはまったく無縁の印象を受けました。 今回のふたつのプログラムが今後どういう発展をしていくのかはまだ分かりませんが、競技用に昇華していくことも含めて楽しみに見守っていこうと思います。 安藤さんは今回、ファンとメディアの目が集まる最高の場所とタイミングで強力なアピールを行ない、強烈な印象を与えることができました。公演の最終演者にふさわしい演技を行なってショーを引き締めたことに加え、テンションの高い練習を行ない技術力が向上し、表現の幅が大きく広がって多彩になり、心身ともにストイックに、最も大事な場所と時間に向けて状態を上げている様が見られたのはファンとして嬉しいと言うほかなく、今後の彼女を見守り応援する強い動機付けとなりました。健康な状態で良い練習を続け、彼女らしいスケートを極めていってほしいと思っています。
by morningdew21
| 2009-06-21 23:42
| アイスショー(国内)
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