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2007年 03月 27日
大会の全日程が終了し、日本選手団にとって最高の結果が出ましたので、今大会に関する私の率直な感懐を記していきます。まとめず、思いついたことから続々と記しますのでご了承願います。
○女子メダリストについて 「安藤さんが浅田さんを僅差でかわして優勝」という結末は、今後の両名の選手活動という観点からすると最高の結果だったと思っています。私は事前に多くの方のブログを訪問して今大会の予想を寄せており、全ての場所で「安藤さんが2位。それ以外はその時の運」というふうに記しました。理由は、安藤さんが今シーズン飛躍的に成長したこと。けれどもまだ成長の余地があること。ゆえに今回トップに立ってしまうのではなく、再度トライする余地のある順位が望ましい、来期以降も彼女が成長するのを見たい、というものです。平たく言うと「今回優勝してしまうと今後は彼女の滑るところを見られなくなってしまうのではないかという危惧」を持っていた、ということです。 けれどもフリーの日、浅田さんがトップに立ってみると「絶対にこのままじゃおかない!」と思った私がいました。 実際に安藤さんが優勝してみると、まったく不安を抱くことはなく、彼女が今後に向けて更に力強く歩いていくことが伝わってくるのでとても嬉しく、楽しみにしています。 フリープログラムの日に初めて登場したあの衣装は、当初予想していたものよりはずいぶんシックでシンプルな色味とデザインのもので、私などは人間が古いものですから、昔の東欧の体操選手みたいと感じ、でもその少し懐かしい落ち着いた美しさは予想以上の効果を本人にも見るものにも与えていたと思います。 今回各所で話題になった安藤さんのシンプルなメイクと同様、それ以前の重い鎧(黒の衣装は大好きでしたが、アクシデント続きの今シーズンのフリー演技の象徴のように思えて気が重くなってきたのも事実)を脱ぎ捨て、ほんとうの自分の姿と心を表わしての今回のフリー演技は落ち着いた、静かで暖かく、でも内に秘めた強くて熱いものを感じさせるすばらしいものでした。変な力みや突っ込みがなく、終始柔らかく動けていたのもよかったです。 ショートも含めて今回の彼女の演技でもっとも感動したのがステップワークの良さで、上体の大きな動きだけでない、肝心の足の動きがとても安定し確かな歩みが進められていたのにほんとうに胸を打たれました。得点面でも、レベル3に大幅な加点がつくところまで評価されています。 あと、両方のプログラムとも掛け値なしに女性らしい美しさにあふれていたと思います。私は世界選手権前に今シーズンの彼女の試合映像を見直す際、評価が高かったスケートアメリカよりもエリック・ボンパール杯のもののほうが遥かに好きで、後者ばかり何度も見直していました。勢いはあるけれど力任せで荒削りなところもある前者より、試合に臨む際の表情が静かでかつ力強く、演技そのものも柔らかでフェミニンなフランス大会のほうが何度見直しても目に快く、前者の得点と後者の優しい芯の強さをあわせもった演技が世界選手権では見たいと思っていました。今回、それが現実になって感慨もひとしおです。世界選手権の演技は、GPシリーズの頃から彼女が目標に掲げてきた「強く美しく」という言葉を実現できたすばらしい内容でした。 浅田さんは、ショートの6分間練習を見ているとき非常に影が薄く、そこに滑っているのかどうか最初わからないほどでした。自分の中の何かにとらわれているのか、声援が本人に届かないような印象。細くて肉の薄い上半身をやっと認めると表情が硬くうつむき加減で、実際の演技にもその辺が出てしまったと感じました。 苦しい中でのフリー演技は一転して最高でした。文句なく、今シーズンのベスト演技だったと思います。いちばん嬉しかったのが、滑っている最中に最高の笑顔が出たことと動きが弾んでいたこと、演技が音楽とぴったりシンクロしていたこと。気まぐれな暴れ馬のような今シーズンのフリープログラムに振り回されっぱなしだったのを、初めて乗りこなした瞬間でした。 浅田さんの、24日はフリーでの最高の演技と評価に嬉し涙、メダルの結果が出たら今度は悔し涙で泣きっぱなし、翌25日のテレビ出演では銀メダルの感想を聞かれ「今は嬉しいです」と答えて下を向いてしまう正直さも好ましかったです。今シーズン気になり続けた「レベルの取りこぼし」が今回の明暗を分けた感があるので、今後の課題として取り組んでほしいと思います。 キム・ヨナの今年のフリープログラムは男子も含めた今期すべてのプログラムのうちでもっとも好きなひとつで、胸を締めつけられるほどすがすがしくすきとおったあの曲と、同じようにすがすがしい彼女の滑りは、完全にシンクロさせて滑りきることができたら誰も追いつくことのできない高みに到達できると思いました。 この3人は全員、今期2勝ずつ。力はどの選手もまったく互角だと思います。来シーズンもその次も、充実したライバル関係を続けてほしいと心から願います。 大会期間中から当ブログに多くのコメントを寄せていただき、どうもありがとうございました。今回は各々にお返事することはかないませんがご了承願います。全てに目を通しております。
by morningdew21
| 2007-03-27 01:36
| 競技・大会
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